海外大学院の教授に英文メールを書く

 

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 2020年度のアメリカ大学院入試選考は終盤に差し掛かっている時期になりました。ということは、次の年度の選考について大学側が準備を始める時期にもなります。これからの数か月はまだ教授先生の所に他の受験生からメールが殺到する時期ではないので、志望する先生に早めにコンタクトを取ることで返信が来る可能性が高くなると考えられます。専攻によっては事前に教授先生へコンタクト不可というケースも聞いたことがありますが、自分が出願した理工系の専攻にはそのようなルールはなく、志望する先生にはほぼ全員にメールを送信していました。

 メール送信する前に、履歴書のような役割を果たすCV (Curriculum Vitae)とResumeを準備しておくと良いと思います。CVとResumeの主な違いは、CVは本人の完全な履歴(2枚以上)であるのに対して、Resumeは応募したいポジションに特化した1枚の履歴書です。CVとResumeの説明と作成に関しては、こちらのコーネル大学のサイトがとても分かりやすく解説していますResumes and CVs : Graduate School。テンプレートのようなものネット上でたくさんありますが、ぜひ説明を読みながら自分で書くことをお勧めします。メールの本文では長々と自己紹介をすることができないので、CV, Resumeを添付して、興味を持ってもらった場合に読んでもらえる可能性があります。充実したLinkedInのプロフィールや個人ホームページもあると、それらのURLをCVに追加してもっと自分をアピールすることも可能です。

 大前提は、Gmail等のフリーメールアドレスを使用しないことです。100%読まれないと言い切ってもいいでしょう。所属機関のメールアドレスを使用してメールを送信しましょう。また、口語ではなく書き言葉で、can'tやdon't等の短縮形を使わないように注意することが必要です。全文で200 wordsを目処に、長くても250 wordsで書くことを目標とすると良いと思います。

 自分は英文専攻ではないので、英作文の解説ではなく、理工系の学生が海外大学院の教授に自分の受け入れを打診するメールを書くという状況を想定して、以下に英文メールの各要素とその大まかな書き方を示します。

表題[Title]

 簡潔にメールの意図を述べ、数wordsで収まる表題にしておくと良いです。Ph.D.のポジションを探しているのであれば、Ph.D. applicant等で、ポスドクのポジションであれば、Pursuing a pos-doc position等と言った具合です。

宛名[Salutation]

 面識のない先生にメールすることも考えられるので、HiやHelloよりもDearを最初に使ったほうがフォーマルな文面になります。Dear Professor [Last Name]という風に、宛名を本文の最初に書きます。

 ここで要注意なのでは、ProfessorやDr.の後に、フルネームを続けて書かないことです[1]。Albert Einsteinという先生ならば、Professor Einsteinと書いて、Professor Albert Einsteinとは書かないようにしましょう。

本文[Body]

 本文では最初にこのメールを書いた目的を明示し、その後30~50 words程度で簡潔に自己紹介をします。自分の現在のポジション、どんな研究をしているかを端的に伝えます。自分の指導教官の名前も明示しておくと良いことがあるかもしれません。これは私が今のボスの電話面接で聞かれたことで(Who was your advisor?)、後日ミーティングした時も、「あなたの元指導教官はすごい研究者だ、今度学会で会ったら挨拶しとくよ!」と言っていました。

 次に主な業績(第一著者論文の本数、学内や学会での受賞歴)、奨学金の獲得状況(獲得金額とその内訳、支援期間等)を中心に述べます。留学用に確保した奨学金がなければ過去に獲得した奨学金を示すのも一つの手だと思います。とは言え業績を羅列しすぎると全体のインパクトが下がってしまうので、論文/受賞歴/奨学金の中で特筆すべきものを選んで適切な形容詞(remarkable, outstanding等)で端的にアピールします。

 志望先の先生とのつながりを示す経験、例えば以前インターンしていた、共通の知り合いの先生のところで研究していた等を書けると、メールのその先に内容もしっかり読んでもらえるかもしれません。無ければ無いで、無理やり書くことは避けましょう。志望研究室の論文を熟読して、自分がどのプロジェクトでどのように役立てるかをアピールする内容を含めるのも大切です。先生によっては研究室のホームページに、問い合わせのメールをする場合に含めるべき内容を掲示している場合があります。それに従ってメールを作成すればメールの中身を読んでもらえる確率が高まります。段落の終わりに、CVやResumeを添付したことを知らせておくと、どんなファイルが添付してあるか分かってもらえるかもしれません。ファイルが添付してあるメールは読まないという先生もいるとネットで見かけましたが、私自身がこのようなケースを見たことがないので何とも言えません。

 最後の段落に、先生が講演する予定のある学会、研究室訪問またはSkype, Zoom等で面談のアポイントを試してみます。場合によっては、面談はAdmissionの選考を通過してからと言われることもあると思いますが、もし面談に応じて下さるのであれば、自己紹介や研究内容を正確に伝えられるようにしっかり準備しましょう。

結び[Sign off]

 フォーマルな文なので、結びはYours Sincerely, やWarmest Regards, 等を書きます。

署名[Signature]

  自分のフルネームを書きます。その下に所属機関を。英文の場合は日本語と逆で、大学名や会社名からではなく、所属する最も直接な組織から書くので要注意です。

 

 以上に海外大学院の教授への英文メールの構成を示しました。ネットにあるテンプレートを単語だけ書き換えて使うことは避けるべく、一文一文しっかり自分の言葉で書くことが非常に大切だと思います。文法ミスはGoogleGoogle Scholar検索、さらにはGrammarlyGoogle Ngram Viewerozdic.com - the English Collocations Dictionary online等のフリーツールを使いながら検証し、英語話者の友人が居れば添削を依頼する等、送信する前に内容を細心にチェックすることをお勧めします。メールの返信があまり来なくて心が折れそうになることもあると思いますが、根気強くコンタクトを試みると良いことがあるかもしれません。

 

参考にしたリンク:

www.dailywritingtips.com

www.psychologytoday.com

引用:

[1]: https://emswriting.wordpress.com/2015/12/15/honorific-titles-and-personal-names/

アメリカ大学院で一年間授業を受けた所感

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 私が在籍するUCSB (University of California, Santa Barbara)はクォーター制を採用しています。一年間を四つに分けて、Fall quarterに始まり、winter、spring、summerと続きます。一つのクォーターの授業期間は約二か月半です。Summer quarterに授業を選択することは必須ではなく、特に授業を取らない人は休みとなります。私のようなResearch Assistantとして採用された人はSummer quarterに授業料が支払われないので、この期間中は授業を取らずに研究に専念します。ほかにセメスター制のアメリカ大学が多く存在しますが、私が経験していない制度なのでここでは割愛します。

 クォーター制では授業の進度が非常に早く、授業開始後の一か月前後に中間試験、さらにその約一か月後に期末試験が行われる形式が多かったです。授業自体は週二、三回、二時間前後の長さで行われますが、カバーする範囲は専門書一冊や数冊の分量なので授業中は要点のみが伝えられ、ほかに宿題、office hour、TA sessionを通して学習していき、感覚として授業とそれ以外の学習時間の比例は1:9だと思います。専攻で必修に指定されている授業はさらにB以上の評価が必要などの要件が課され、これを満たさないとQualification試験に進めないなどの制限があります。

 一年間の中で私が受けた授業はおおよそ以下に示す三つの形式で行われていました。最初の学期は三つの授業を取って、とても研究と両立できなかったので、次の学期からは二つの授業を取るようにしていました。

 

宿題/試験:宿題 (Homework, Problem set)の比重は20%-30%、中間試験(midterm)と期末試験(Final)が残りの比重を占め、期末試験のほうが中間試験よりも比重が高いことがしばしばです。中間試験は授業開始のおよそ1か月後にあり、期末試験は学期の終わりに(授業開始から二か月+10日ほど)にやってきます。一つのコースは週二回授業で、週一回宿題が出されることもあれば、二週間に一回重めの宿題が出されることもあります。宿題は授業でカバーしきれなかった部分を学習させるように構成され、先生が出題するオリジナル問題は非常に難解の場合も多く、office hourやTA sessionで質問しながら宿題を解いていくことが多かったです。Take home finalという宿題のような期末試験が課されることもあります。この場合の期末試験は教室で決められた時間で受ける試験よりも格段に難易度が上昇することが多いようです。

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実験は図に示すようなクリーンルームで行っていました

実験/レポート:実験は先生から出された課題を数人からなるグループ共同で完成させていくことになっていました。トレーニングラボでTAやラボマネージャーから指導を受けながら実験を進めていき、その結果と考察をレポートにまとめて行きました。提出する実験レポートは実際にジャーナルに投稿する論文形式で書かれることが要求されていました。大学時代の学生実験と異なるのは、一つの実験課題が5時間ほどで終わらせることができていたのに対して、こちらで一つの実験課題を完成するまでに数十時間が必要でした。朝から晩までグループと実験室にこもって実験しながらディスカッションして、必要があれば土日でも実験することがありました。実験は上手く行かなかった場合に再実験を行うなど、非常に時間がかかることを覚悟した上で臨む必要があります。

宿題/プレゼンテーション:学期を通して4,5個の宿題が課される上に、期末試験として10分-15分のプレゼンテーションが課されます。プレゼンテーションのテーマは先生からリストで与えられ、もし自分がやりたいテーマがなければ先生にテーマを提案することも可能でした。大学院の授業なので一つのクラスは15人〜20人程度であり、自分の同期が大半を占めるので、そこまで緊張することなくプレゼンテーションを行うことが可能でした。この形式の授業の中で中間試験が課されることもありました。

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 授業を選ぶのに自分の周りの状況を確認したほうが無理な戦いに臨まずに済む可能性が高くなります。最初からアメリカのトップ大学卒の学生ばかりがいる授業でグループディスカッションしたり質の高いレポート書いたりプレゼンテーションしたりするのはきつくなる場合もあるので、英語に慣れていないうちは以下に示すように英語スキルにあまり影響されない授業を選んだり、研究との両立スキームを作ったりすると良いと思いました。

留学生比率:留学生比率は工学部が高めになっているところが多いようですが、UCSB College of engineeringでは約50%となっています。私が在籍するMaterials Departmentは約10%と留学生比率が低く、毎年一人か二人程度しか入学していないようです。完全に憶測ではありますが、留学生比率があまり高くない専攻では、英語文章作成スキルやプレゼンテーションスキルがまだ磨かれていない留学初期に要求水準の高いレポートやプレゼンテーションが課される授業を選ぶより、解答に数式が大部分を占めるような授業を最初に選ぶといいかも知れません。

研究と授業:RAとして採用された時期に研究プロジェクトがキックオフされたので、指導教官からのプッシュが非常に強かったです。日本にいた時の研究室は助教の先生から指導を受けていたが、アメリカの大学ではAssistant Professorから独立して研究室を持つので、普段はポスドクから指示が出ていました。私が所属する研究室のPI (Principle Investigator)はDistinguished Professorということもあってかなり忙しく、平日の予定は常に埋まっているので、土曜日、日曜日どちらかはグループで進捗ミーティングが開かれることになっていました。実験装置のメンテナンスでも土日一日中作業することが多かったので、予想よりもコースワークに対応できる時間がかなり少なく、研究と授業のバランスを取るのに大変苦労しました。

 渡米する前まではPhD課程の一、二年目はコースワークに専念し、Qualification試験を通過してPhD Candidateとなってから研究活動を始めると聞いていました。しかし、自分の場合は以前の記事にも書いたようにアメリカ大学院受験:出願から結果通知まで - アメリカ大学院でPhDを目指す、プロジェクトがキックオフされるタイミングで研究グループに入ったので、まだ人手が少なく実験やメンテナンスの負担がとても重い、という問題に直面していました。

 同じ専攻に同期入学した学生は指導教官によってはコースワークに割けることのできる時間はそれぞれ異なります。授業に専念していいよと言われた同期もいれば、最初は授業に出ていたのに研究室の事情で全部の授業をドロップして研究の引継ぎをしないといけない同期もいました。この場合PhDの学生は留学生でも授業をドロップすることは可能です。学部留学の場合は授業をドロップしてしまうと在留資格に必要な単位が足りなくなる場合があるのですが、PhDの学生は研究活動することで単位が与えられるので、ついていけない授業があったり研究が突然忙しくなる場合はドロップして研究の単位で足りない分を補填することも可能です。自分の場合は研究が忙しいのに取捨選択して授業をドロップしたりするなど調整できなかったことが反省点になります。できるだけAを取るようにしたかったのですが、それが叶わなかった授業もありました。

 反省点だらけのPhD一年目となりましたが、授業で取りこぼした分は研究で取り返すしかないと思っています。2019年中は共著論文三本提出し、そのうち一本は受理済みでFeaturedとして取り上げられました。2020年はPhD Candidateになる為のQualification試験が控えていますが、学会発表、原著論文提出できるように励みたく思います。

アメリカ大学院留学:毎月の収支を考える

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UCSBの大学院生向け学生寮San Clemente Villages

 写真はUCSBの大学院生専用寮のSan Clemente Villagesです。私は家族寮に住んでいますが、同僚や他の学科の友達はほとんどこちらに住んでいます。アメリカに留学しに行くという時に、経済面に関する不安はよく耳にします。日本にいた時は、特にアメリカは物価が高いというのをあちこちで耳にしていたので、留学に来る前や、来た当初は買い物や家賃に関する不安はなかったと言うとウソになります。なので以下の項目からアメリカ大学院留学中の毎月の収支を分析しました。

 

収入 

欧米大学院における博士課程の学生の待遇 - アメリカ大学院でPhDを目指すアメリカの大学院で博士課程の学生は授業料免除+生活費支給の待遇が受けられると書きました。しかし、どの程度の生活ができるかは詳細に書いていませんでした。

 私はある留学イベントで興味のある大学のブースを回っていた時、ある大学のブースでPhD留学を目指していてその給料で生活するという旨を話したのですが、「その給料だけじゃ生活できないよ」という風な返答を受けて、不安を覚えたと記憶しています。他の方の話を聞いていると、普通に生活できる、という返答もあったり、当時では一体PhD給料で生活できるのか、できないかが不明でもやもやしていました。アメリカに来てから自分や周りの給料事情を聞いた限りでは、学科によって給料の違いはあるものの、住居費用、食費を除いた後に数百ドルが残るという人がほとんどです。

 下記のようなサイトで各大学の各学科が支給している給料を調べることができるようです。例としてHarvard大学を調べてみました。物価が高いと言われるボストンに位置するので、給料の額はそれなりに設定されているようです。このほかに日本では通常給与から健康保険が天引き(学振DC1等なら国民健康保険の支払い)されますが、アメリカには国民皆保険制度はないので、大学のHealth Planに加入することが多いです。このHealth Planも博士課程の学生なら大学から支払われるので、自分の給料から別途支払う必要はありません。日本からの留学生の場合、残念ながら租税条約ではこの給料は課税範囲となり、給料の一部を連邦税(Fedral Tax)として納めなくてはなりません。中国や一部の国からの留学生は連邦税を支払う必要はなく、この給料の全額を受けることができます(州税を考慮しない場合。カリフォルニア州では一定以下の収入なら州税が免除されます)。

Results - PhD Stipends

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PhD学生に支給される年間給与の一例(PhD Stipendsより)

 上記で示した額に加えて、さらに奨学金を獲得した場合、多くのケースとしては大学から支給される給料の額は減少しますが、大学からの給料+奨学金=決められた上限額まで大学が支払います。奨学金を獲得したからと言って大学から給料をもらえなくなるということではありません。

住居費用

 トップの写真で示した大学院生専用寮の内観や現在の寮費などはこちらのウェブサイトで確認することができます。

San Clemente Villages | UCSB Housing, Dining & Auxiliary Enterprises

寮費には電気、水道、ガスが含まれていて、インターネットも寮の敷地内で大学の有線LAN&Wi-Fiを使うことができるので、通信費は携帯電話のみと考えて大丈夫です。寮の中では四人住み、二人住みという二つのタイプのシェアルームがあり、寝室はそれぞれで、リビングルーム、キッチン、バスルームは共用という形になります。寝室にはベッドと勉強用の机あり、リビングには共用のソファとダイニングテーブルがあります。キッチンではIHコンロと冷蔵庫、電子レンジ、オーブンが揃っています。寮の施設外観、及び内部の様子を紹介する動画があったので以下に示します。

UCSB Sana Clemente Village Tour(UCSB GradPostより)

 四人住みタイプのシェアルームは毎月$775、二人住みタイプは毎月$887という家賃になります。学生寮なのでデポジットは取られませんので、このコストは考慮に入れなくても問題ありません。四人住みタイプのシェアルームに住むと想定した場合、寮費は毎月日本円にして約8万円になります。寮費の中に電気、水道、ガス、インターネットも含まれているので、東京で家賃7万円のアパートに住んで一人暮らしする場合とほぼ変わらない額になります。日本と異なるのは、部屋内に洗濯機を置けないので、共用のコインランドリーを使用することになります。寮生であれば洗いと乾燥合わせて$2程度で済みます。

 学生寮に住まない場合は、自力でOff-campus residenceやcraiglistなどで部屋を探すことになります。料金は様々で、場合によっては学生寮よりも安く住める場合もありますが、留学生を受け入れるかどうか、安全かどうかなど不明点も多いので最初は学生寮に滞在するとアメリカでの新生活に慣れやすいかもしれません。

通信費用

 携帯電話のネットワークはアメリカの四大キャリア(AT&T, Verizon, T-Mobile, Sprint)か、格安SIMを利用することができます。日本でSoftBankを使用していた方はアメリカ放題というサービスを、Sprintのネットワークで使うことができるようです。キャンパス内と寮には学生なら使用できるWi-Fiがあるので、私の携帯電話はプリペイド格安SIMを使用して、データ通信プランは最低限の月2GBにしています。これで毎月携帯電話料金は$15になります。この料金で電話は掛け放題、日本への国際電話も掛け放題なので、不満はありません。毎月かかる通信費用は$15~$30程度と考えても差し支えないと思います。携帯端末代金は人それぞれなのでここでは考慮に入れません。

食費

 食費に関しては外食の利用をできるだけ減らしていくことがキーだと思います。アメリカは物価が高いと言われる所以の一つは、外食が高いからそういう印象を受けやすいからだと思っています。大学内にはYOSHINOYAやPanda Express、Subway等のファストフード店がありますが、日本円換算で一食1000円近くかかるので、日本に比べると割高だと思います。コストコのフードコートやマクドナルド等は値段がリーズナブルなのですが、毎日ファストフード食べるのは体に悪影響なのでほどほどにしておきたいものです。そこで、スーパーで食材を買い込んで簡単に料理するなどして日々の食事に充てることになります。地域によって異なりますが、Costco, Alberterson, Trader Joes等で買い物していた経験からすると日本にあるスーパーと同等かさらに安いくらいの価格帯だと思います。勿論割安の商品はまとめ買いである場合が多いので、寮や学校のキッチンにある冷蔵庫を活用して保存したり、友達と割り勘で買うなりして、工夫が少し必要です。私の毎月の食費は時々の外食を含めて大体$150~$250になります。人によっては大学のmeal planを利用することもあるようですが、個人的にはやや割高に感じているので利用していません。

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地元にある99 Cent Shop(日本での100均に相当)

収支計算

 ここまで毎月の主な支出について書きました。UCSBにいる標準的なPhD学生として想定した場合、住居費用は$775、通信費用$20、食費$200、その他$100とすると一か月の支出は約$1100になります。私の大学にいるPhD学生は大体毎月手取りで約$2200の給料を受け取っているので、下記のグラフに示すように、毎月約$1000の黒字を貯金や投資などに回すことができます。アメリカでは年利2.5%の金利を出すオンライン銀行もあるので、Saving accountを開いて金利を受け取るのも一つの手です。

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留学中毎月の収支シミュレーション

 そのほかの出費として考えられるのは、研究で使用する白衣や防護眼鏡、実験道具などですが、これらはすべて大学から支給されるので、自費で支払う必要はありません。アメリカ大学院留学で学生寮に住んで外食を抑えれば、毎月余裕のある生活ができて、経済面での不安はほぼないと考えても問題ありません。極端に食費を削ろうとするのも健康に悪影響なのでお勧めしません。あまり交際費を計上していないのですが、学期中は研究とCourseworkの勉強で忙しくあまり時間が取れなかったのは本音です。それぞれの地域によって賃料や食費などの物価が異なり、上記のような収支計算はあくまで一例であることをご了承いただけると幸いです。

アメリカで働くには:大学院留学経由編

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UCSB Kohn Hall カブリ理論物理学研究所前

 春学期の期末試験が終わりPhD1年目のCourseworkをすべて終えました。今学期はResearchも忙しくCourseworkとのバランスをとるの精一杯でブログを全く更新できませんでした。写真に写っているのはカブリ理論物理学研究所で、東大にあるカブリ数物連携宇宙機構と共同研究をしていると思い込んでいたのですが、どちらも米国カブリ財団によって設立された研究機関で直接的な関係はないみたいです。天気が良い日はこの研究所の向かいにある駐車場の最上階まで登って海の景色を眺めたりしています。

 前回の記事アメリカで働くには:大学留学経由編 - アメリカ大学院でPhDを目指すでは、アメリカの大学に留学して卒業後にシリコンバレーの企業で働いている友人を例に書きました。F1ビザのOPT制度を使って最大三年(STEM分野の学位を持つ場合のみ)までアメリカの企業で働きながら、その間にH1-Bビザや永住権(グリーンカード)を申請するケースはかなり普遍的です。

 しかしアメリカの大学へ留学するにはやはり経済的なハードルが立ちはだかります。例として州立大学であるUniversity of California, Berkeleyは2019年現在で年間授業料(健康保険など諸費用含む)で約4万ドル(留学生)[1]、Massachusetts Institute of Technologyの2019年の年間授業料は約5万ドル[2]です。日本の国立大学の年間授業料の10倍近くにも達していて、私立理系と比較した場合は倍以上になっています。授業料に加えてリビングコストである住宅費用や食費などを考慮すると年間6万、7万ドルを用意しないとアメリカ大学留学は実現できないということになってしまいます。大学または政府機関、財団などから給付型の奨学金を獲得するなどして留学資金の目処を立てることで経済面のハードルを下げることは可能です。近年では日本政府が積極的に給付型の奨学金の拡充を実施しているようで、私の身の周りでは、

www.tobitate.mext.go.jp

の制度を利用して留学に来ている学生が増えているような気がします。 

 一方で、大学院留学で博士号取得を目指す場合は、欧米大学院における博士課程の学生の待遇 - アメリカ大学院でPhDを目指すで書いたように、多くの場合は授業料免除+生活費支給の経済支援を受けることができます。また、給料の額を雇ってくれている教授先生と交渉して昇給してもらうことも可能という事例をいくつか聞きました。少なくとも経済的なハードルに関してはアメリカの大学院留学は大学留学よりかなり軽減されています。

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 アメリカの大学院を卒業して晴れて博士号または修士号を取得した後にもアメリカに居続ける場合はF1ビザのOPT制度で企業で働くか、またはアカデミアを目指してポスドクのポジションを得て働くかなどの道があります。ここで注意が必要なのはJビザでポスドクをした場合、二年ルール(Two Year Rule)[3]に引っかかるケースがあり、アメリカの大学で教職を得たいのにポスドク終了後にアメリカ以外の国で二年間生活しないといけなくなるという制限があります。私が今いる研究室の香港出身の博士卒業生はポスドクの時に二年ルールに引っかかってしまったために、その後アメリカ国外で研究員をしてまたアメリカの大学で教職を探すのに大変な苦労をしたと聞きました。私の知り合いの日本人の研究者の方もアメリカでポスドクした時に二年ルールが適用され、ポスドク後はスイスの機関で研究をしていました。ビザの現在のステータスや今後発生しうる制限と自分のキャリアプランと適合するかは詳細にチェックする必要があり、場合によっては移民弁護士に相談するなどして不必要な帰国が発生しないように注意したほうが良いと考えられます。身近に日系の弁護士がいなくても絶対数が多い中国系などの弁護士に頼るなどしてビザステータスに問題が出ないようにしておくと安心な留学生活につながります。

 Industryに進む場合はH1-Bビザで就労するケースが大半を占めますが、このビザの抽選においてアメリカの大学院で博士号または修士号を取得した人に対しては専用の枠が用意されます。ほかの人に比較して「アメリカの大学院」で博士号または修士号を取得した人は抽選に当たりやすいと言われています。移民弁護士のセミナーを聴講した時は特にこの「アメリカの大学院で」ということを強調していました。イギリスのオックスフォード大学からの博士号を持っていても、この枠には適用されないとのことでした。同じ大学でComputre Scienceの修士号を取得してFacebookに就職した友人はH1-Bの抽選にあっさり当たって楽だったという話をこの前聞いたところでした。H1-Bの抽選枠は政策の影響をも受けて年々変動していますが、アメリカの大学院で博士号または修士号を取得した場合は抽選はずれて一時出国を強いられる可能性が低くなると考えても差し支えないと思います。

 2019年現在では、アメリカと中国の貿易摩擦によって、中国人留学生へのビザ発給が厳しくなる一方と言われています。私の留学ビザは博士取得までの5年間有効ですが、同時期に入学した(2019年9月)中国人留学生は1年しか有効期間を与えられていません。最近では中国人留学生へのビザ発行が拒否されるなど、これまでアメリカ留学生の多くを占めていた中国人留学生がアメリカ留学に来ることが難しくなっています。一時的な状況に過ぎない可能性もありますが、日本人学生にとって入学の合否を争うライバルが突然激減した現在はアメリカ大学院へ留学する良いチャンスなのかもしれません。

 アメリカの大学院に学位留学して博士号または修士号を取得した場合は、アメリカで働く上でいくつかのアドバンテージをもたらすと考えられます。経済面でのハードルが大学留学より下がることも然ることながら、労働ビザの抽選で有利になったりするなどキャリアの選択も広がります。ビザステータスを維持して学位を取得することが大前提なので、不明なことがあれば大学の留学支援課や移民弁護士に相談するなどして、アメリカの生活を安定させることが重要となります。

 

[1] Fee Schedule | Office of the Registrar

[2] Tuition & fees | MIT Registrar

[3] J-1ビザと2年間の海外生活条件

アメリカで働くには:大学留学経由編

 

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UCSB構内にて

 三月に入り夜の気温も10℃前後まで上昇し、冬時間は3/10に終わるので、いよいよ春の訪れです。アメリカでは卒業のシーズンでもあるので、晴れて卒業式でドレスアップした学生の姿もあちこちで見ることができます。

 先日Twitter上で大丸拓郎さんの記事を拝見して、自分を含む多くの日本人はアメリカで働く夢を持っている一方で、なかなかどうすればアメリカで働けるかを知る情報源がなく探すのに苦労したことを思い出して、記事を書くことにしました。

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 大丸拓郎さんの体験談は自分がリサーチしてきたアメリカで働く体験談の中でも大変珍しい、日本から留学を経ず直接アメリカに渡って働くというケースであるので、ぜひ一読することをお薦めします。

 本題になりますが、今回は大学留学経由でアメリカ企業で働くことについて解説していきたいと思います。私は日本の大学を出て日本企業で働いていたので、自分のケースではなく友人のケースを例に挙げます。

 アメリカにはオーストラリアやニュージーランドのようなワーキングホリデービザを発行していないので、米国永住権(グリーンカード)を持たない外国籍の人がアメリカで合法的に働くにはHというカテゴリーのビザを持っていなければなりません。これは多くの人がよく口にしているH1-Bになります。

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 しかし、H1-Bビザ[1]を持っていればアメリカ企業で定年まで働けるわけではなく、有効期限は三年となります。その上毎年発行されるH1-Bビザに数の上限があるので、更新の際に発行されなかったというケースになると在留資格が失われてしまうので帰国しなければいけません。また、最大の関門はH1-Bビザは雇用主がスポンサーとなることを約束しなければいけないので、アメリカ人を雇うより余分コストがかかることになります。

 上記のようなハードルにより、アメリカでの就学や就労の経験がない日本人が、直接アメリカ企業に就職することをとても困難にしています。上記で載せたnoteにも記されていましたが、アメリカで就職するにはコネがほぼ必須となります。コネはマイナスなニュアンスに取られがちですが、採用側からしてみれば海の向こう出身で英語がまともにできるか分からない人間より、会って話したことのある人を採用するのはある意味当たり前のことです。

  前置きが長くなりましたが、ここからはアメリカ大学留学経由でアメリカ企業で働くことを友人のケースを使って説明していきます。私と同じ高校を卒業した友人の進学、就職ルートを次の図1に示す。

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図1. 友人の進学、就職におけるビザステータス

 ここで注目してほしいのは、友人がシリコンバレー系企業に就職した時に使用しているビザのステータスです。図で示したF1ビザは、留学ビザになります。私のビザステータスもF1です。名前こそ留学ビザなのですが、このF1ビザは意外と強力なオプションがついています。それはCPT(Curricular Practical Training)とOPT(Optional Practical Traning)になります。上記の制度を利用することで、F1ビザを所持していればアメリカ大学在学中に留学オフィスの許可を得てアメリカ企業のインターンに応募して、夏休みなどを利用して働くことが可能となります。

 無事アメリカ大学を卒業した後、OPT制度を利用してアメリカ企業で働くことが可能です。H1-Bビザのように採用側がスポンサーとなる必要はなく、アメリカの大学を卒業していることで英語力も保証されるので、外国籍を採用するハードルが圧倒的にこちらが低くなります。通常OPTの期限は一年間ですが、大学の専攻分野がSTEM(Science Technology Engineering Math)である場合は、STEM OPT Extension制度を利用して最大三年間にまでOPTを延長することができます[2]。OPT期間中に働きながら、H1-Bビザを目指したり、グリーンカードを申請したりして、アメリカで長く働くことを考えているのであればいろいろと措置を取ることになります。ここではあくまで大まかな紹介なので、申請者本人の国籍などによって適用状況が異なるので、詳しくは移民弁護士などで確認する必要があります。

 友人はF1ビザのOPT三年間の後にH1-Bビザを発行を受けてもらえず、アイルランドの外国支社で働きながらH1-Bビザが降りるのを待っていましたが、こういうケースは珍しくない。後日友人の同僚のカザフスタン人も同様にH1-Bビザが降りずにアイルランドに一時的に職場を移し、発行を待つ間に日本に遊びに来ていました。メイド喫茶に連れていったらものすごく喜んでいましたがやはり外国から見てもメイド喫茶は有名みたいですね。

 アメリカで働くことについて全般的に書こうと思ったのですが長くなりそうなので大学経由のケースに限定したもののやはり長くなりました。大学留学経由でアメリカで働くことを目指すのは、「アメリカに居ること」という最大のアドバンテージを、うまく活用して英語を上達させたり、コネをたくさん作ったり、いわば孟子の言葉にある、「天の時、地の利、人の和」で地の利を得て、人の和を得ていくということである。

[1]H-1Bビザ

[2]STEM OPT Extension Overview | Study in the States

アメリカ大学院受験:出願から結果通知まで

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 左からUCSB、CaltechUCLA、MIT、Stanford、UC Berkeleyになります。塔がシンボルである大学を両端に配置しました。実際に写真を撮ったのはUCSBとCaltechだけで、ほかはフリー素材になります。アメリカ大学院受験した時はこの6校を受けましたが、実はどの学校にも実際に行ったことがありませんでした。会社員として企業に勤めていたので、なかなかまとまった休暇をとって訪問する計画は立てられませんでした。

 前回の記事を画像付きで書いたらすこしアクセスが伸びたように見えたので、今回も写真を冒頭に載せました。CaltechはBeckman Instituteの写真を使っていますが、ベックマン温度計を大学生の時の実験で使っていたのが思い出深かったからです。

 昨年のこの時期はちょうど、出願した上記の大学から結果通知が来ていた頃でした。時系列で振り返ることで、志願者の合否を判定する審査システムを自分の視点から読み解いていきたいと思います。

 9月:ほとんどの大学の出願サイトはこの時期にオープンしたと覚えています。出願用アカウントを作るだけならメールアドレスと簡単なプロフィール設定で作れるので、大学からなんらかの情報が送られる可能性に備え、作っておいても大して手間はかからないはずです。図1にStanford大学のオンライン出願サイト画面を示しました。ほぼ全ての大学はこのようなオンライン出願システムを使っていて、郵送は成績表以外必要ないので、郵便が遅れたり届かなかったりする心配はなく便利です。準備が早い人はここで出願を終わらせて、声をかけられたら合格を決めるなどと言われていますが、自分は準備がまだまだであったので、12月の締め切り前に提出することにしました。

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図1.Stanford大学のオンライン出願サイト画面

 奨学金の締め切りも月末に迫っていたのでこの時期は最も忙しかったと記憶しています。どの奨学金も推薦書が必要だったので、自分が大学生の時にお世話になっていた三人の先生方から頂くことにしました。7月頃にアメリカ大学院受験と推薦状を頂く予定の旨を直接訪問で了承を頂いてたので、この時期にスムーズに推薦状を書いて頂くことができました。大学の先生は数週間海外出張することも珍しくないので、できるだけ前もって依頼しておくことが重要だと考えられます。

 10月:奨学金申請の書類作りと志望する研究室にメールを送付していました。奨学金にまだ合格してなかったので、全く返信がありませんでした。研究室のホームページで見つけた日本人客員研究員にメールしてアドバイス求めたりして、すごく優しく丁寧に教えてくださって感動したの覚えていますが、言われた通りにメールを送信する時間をアメリカ時間の金曜夕方にするなど工夫してみてもやはり返信を頂けませんでした。

 11月:締め切りまで後一か月となっていました。申請していた奨学金から書類審査の不合格通知が二つ届きました。会社員だったので出願できる奨学金が限られていた上に申請していたものも不合格となりましたが、日本学生支援機構(JASSO)の海外大学院学位留学奨学金(給付型)の書類締め切りはまだだったので申請を出しました。出願に必要なSoP(Statement of Purpose)、Personal History、先生方からの推薦状等の書類の英文チェックをウェブ上でやり取りできる業者を使い、清書したりして出願用の書類を月末までに完成させました。先生方は各大学院に提出する推薦状をプリントアウトした後にサインをして、スキャンしてPDFとしてファイル化した後に、上述した出願サイトから送られてくるURLに入って推薦状をアップロードすることになります。

 TOEFLも最後の悪あがきとして一回受けましたが、前日に会社の飲み会に参加したのでコンディションは悪かったのですが、結局この時に自己最高点の98点を取れました。しかし目安の100点には到達できませんでした。締め切りまでの時間もなかったのでTOEFLの受験はここで打ち切りました。大学にTOEFLのスコアを提出するには、TOEFLのサイトから送り先の大学のコードを入力して別料金を支払って送付指示をする必要があります。何営業日か掛かってしまうので、11月のうちに送付手続きを終わらせておきたいものです。GREも同様にETF運営なので、同じような手続きでスコア送付手続きを早めに終わらせておくと安心です。大学によっては出願サイトにTOEFLスコアが正式に届きましたと表示してくれるところもあります。

 成績証明書の原本を必要とする大学と必要としない大学がありますが、必要となっている場合は早めにEMSにて自分の卒業大学から所定書式(英文、厳封など)で取り寄せたものを送付する必要があります。私は東京大学工学部学生支援チームに申し込み書と返信封筒を送付したら、三営業日ほどで綺麗に厳封された成績証明書10通返送してくださって(重量オーバーだったようで新たに切手を買ってくださったみたいです)とても感謝でいっぱいな気持ちになりました。

 12月:すべての出願書類が揃い、あとは各大学院の出願サイトで書類をアップロードして提出ボタンを押すのみになります。出願した6校の締め切りのうちスタンフォード大学だけ12/5で、ほかは12/15でした(アメリカ時間)。出願サイトにも細かい記入事項があるので、余裕を持って提出ボタンを押せるように多めの時間を確保しておくとよいと思います。提出すると下記図2のように確認メールが届きます。

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図2. UCLAから届いた出願書類提出確認メール

 1月:インターネットで読んだ体験記ではこの時期に大学先生から個別に連絡が来るというケースもあるようですが、私は全く何もなく暇でした。中旬にJASSOから大学院留学奨学金(給付型)の書類合格通知と面接の連絡が来たので、奨学金の書類審査に合格した旨を各大学院のAdmissionと先生のところに連絡しました。前までは全く返信もらえなかったのですが以前の記事(奨学金が示すのは財政能力だけではない - アメリカ大学院でPhDを目指す)にも書いたようにおよそ半数の先生から返事を頂くことができました。今年は学生を取る予定はないと教えてくださった先生方もいらっしゃいましたが、MIT、Stanfordのそれぞれの一人の先生方からは教授会の判断を待ってから話そうと言われました。

 2月:3日にJASSO大学院留学奨学金(給付型)の面接を受けました。英語で自分の志望動機を90秒で述べるのと、質疑応答でした。約10分の面接は終始和やかな雰囲気でした。一か月後に合格通知を頂きました。

    15日にStanford大学からメールが来て、出願サイトでDecision letterを確認しましたが、不合格でした。このように出願サイトに更新があったとメールが来て、サイトでDecision letterを確認するというパターンが多かったです。返信をくださったStanfordの教授先生に不合格だったことを伝えると、また頑張ってねと返信をくださいました。

    18日にUCLAの教授先生から、Cardiff大学で新しく立ち上げるグループにPhDとして来てほしいというメールを頂きました。そのメールの中で「I really like your background and I'm impressed with your first-author papers.」との文が書いてあったので、先生が自分を評価している点は大学院時代の研究内容と二本の原著論文にあることが分かりました。他の大学の結果も知りたかったので、一旦保留にしました。

 3月:2日にMIT、15日にBerkeley、26日にCaltechから不合格通知が届きました。6校中2校しか残っていませんでした。合格は厳しいと感じまたTOEFL準備を始めました。

 4月:4月初めから一週間経ってまだUCLAとUCSBから何も連絡がなかったので、AdmissionにせめてDecision letterを送ってくださいというメールを送りました。翌日にUCLAから不合格通知が来ました。しかし次の日に私の今現在のボスから連絡が来て、「連絡が遅くなって申し訳ない。今年は学生取るつもりなかったけど、先週大きな研究予算が取れたんだ。大学院を決めてなかったら今週末話しませんか。」との旨のメールを頂きました。先生があまりに忙しいので、なかなかメールベースで電話のアポイントメント取れなかったのですが、ホームページに書いてあったオフィスの電話番号に何度か電話してやっとアポイントメンが取れて、そこから三度の電話面接を経て合格を頂くことができました。先生は私の大学院時代の指導教官を知っていて、東京大学に行ったことがあって日本一の大学と知っていました。また、UCLAの教授先生と同じく、私の二本の原著論文を高く評価していました。その後に私のボスから学科AdmissionにOKが出て、5つの不合格通知を受け取った後に、初めてのAdmit letterを受け取りました(図3)。そこから一週間程度した後に、大学院学部長署名付きの合格通知書を頂きました。UCLAの教授先生からのCardiff大の研究グループへの誘いに断りを入れて、UCSBの入学手続きを進めました。

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図3. UCSB Materials DepartmentのAdmit letter(一部)

 出願準備を含まずに提出ボタンを押してから考えても、すべての受験結果が出そろうまで約半年かかりました。結果としては、6校中5校から不合格通知をもらいましたが、本当に行きたいトップ校だけに絞って出願していたので嬉しい結果となりました。

 それぞれの大学から合格通知が届く時期がずれているのは、志願者をwaitlistに入れているケースがあるからだと思っています。アメリカ大学院はオンライン出願で、指定した日時や場所で筆記試験などを受ける必要はないので、志願者は必ずと言っていいほど併願をします。なので合格者を多めに出したり、waitlistに入れて辞退が出た場合に新たに合格者を出したりしていると考えられます。受験結果がなかなか来なくても、Admissionや先生方に粘り強くメールしたりすると、新規予算獲得などで研究室の運営状況が変わって新たにPh.D.学生を雇うことができるようになった先生から声がかかるかもしれません。

アメリカ大学院受験:志望校選び

 2月に入って最低気温が5℃以下になる日が続いており、晴れていても冷たい風が吹くなど1月よりも寒いと感じているところです。

 昨年のこの時期は、出願した大学院から大体一週間おきに結果通知が届く頃でした。記憶が薄れないうちに、自分の大学院受験における志望校を選ぶ過程を振り返りたいと思います。

 アメリカの大学といえば、ハーバード大学スタンフォード大学マサチューセッツ工科大学などがテレビで名前が取り上げあげられ日本でも知名度が非常に高いと考えられます。近年の日本人ノーベル賞受賞者が在籍しているとして知られるシカゴ大学や、パデュー大学、ジェット推進研究所を擁するカリフォルニア工科大学、イェール大学などを含むIvy league、カリフォルニア大学バークレー校を始めとするPublic Ivy Leagueなどと、名門大学と呼ばれるような大学が枚挙にいとまがありません。

 この中から、例えばコンピューターサイエンスを学びたい!と考えているとすれば、有名なのはハーバードだけれど、理系のトップはMITって聞くし、逆にシリコンバレーと近いのスタンフォードで、スティーブウォズニアックの出身校はUC Berkeley、などと色々頭に浮かんでくるかもしれません。

 一つの参考としてTimes Higher Educationなどが毎年発表している大学ランキングがあります。日本でいうと予備校が出している大学偏差値ランキングがありますね。それぞれの機関が算出する大学ランキングの評価基準は異なるので、順位の前後はありますが、上位に来る大学は大体同じ顔触れになります。

 私が当時参考にしていたのはQS Top UniversitiesのWorld Univesity RankingsとQS Rankings: by Subjectsでした。ほかのランキングサイトを見なかったのは、複数の基準で複雑にしたくなかったのと、トップ校だけを出願するつもりだったからです。こちらにQS Top Univesitiesの世界大学ランキングと電気電子学科のランキングを示します。およそ半分の大学が入れ替わり、世界ランキングで上位に君臨する大学も分野によってはその実力が他大学と比べて位置が入れ替わるということが分かります。分野が細分化されている理系学部では、大学全体のランキングより分野別のランキングが参考になるというケースが多くなってくると思います。

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  2017年度の世界大学ランキング(左)と学科別(電気電子)ランキング(右)[1,2]

 学科を選択するのに気を付けたいことは、アメリカの大学院は選考に際して志願者のバックグラウンドの「コヒーレンスCoherence)」を評価していることになります。つまり、一貫性をもって目標を達成するに必要な取り組みを今まで行い、それを達成するまでのステップの一つに大学院で学ぶことが不可欠であることをアピールしなければいけません。これまではバイオエンジニアリングを専攻していたのに対して、天文学部に志望するとなると、コヒーレンスが不十分と評価され合格確率が低下してしまうことにつながると考えられます。志望する学科が分からない時は、自分の研究分野の著名な先生の所属機関から候補を絞り込むと早いかもしれません。

 私の場合は東京大学大学院応用化学専攻修士課程時代までの研究分野と勤務していた電機メーカーでの業務内容を総合的に考えて学科を電気電子に決めて、アメリカの大学を目指していたので、上記右図の1から4位の大学を志望校に入れました。このほかに、シリコンバレーのあるカリフォルニア州に行きたかったのもあり、大学院での研究分野の著名な先生が在籍するカリフォルニア大学サンタバーバラ校材料工学部、カリフォルニア工科大学電子工学科を加えて、合計6校を志望校としました。

 出願するにあたって、各出願校につき希望研究室を決めておく必要があります。学会などですでに教授先生と知り合った場合は希望研究室が決まりやすいのですが、併願する他校でも知り合いの教授先生が在籍する場合は少ないと考えられます。一つの学科に付き第三希望研究室まで出願できる場合が多いので、教授陣の中から希望する先生方を三人決めることができればいいのですが、アメリカの大学は日本と比べてかなり規模が大きく、一つの学科に50人以上の教授陣が在籍することも珍しくなく[3]、調査を実行するのに大変な労力がかかります。一般的には出願期限の一年前には志望校の調査を開始し、Eメールや現地訪問などを通して教授先生と連絡を取り受け入れの可能性を探っていくことが合格の可能性を高めると考えられます。

 

[1] QS World University Rankings 2019 | Top Universities

[2] Engineering - Electrical & Electronic | Top Universities

[3] Current Faculty | EECS at UC Berkeley