アメリカで働くには:大学留学経由編

 

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UCSB構内にて

 三月に入り夜の気温も10℃前後まで上昇し、冬時間は3/10に終わるので、いよいよ春の訪れです。アメリカでは卒業のシーズンでもあるので、晴れて卒業式でドレスアップした学生の姿もあちこちで見ることができます。

 先日Twitter上で大丸拓郎さんの記事を拝見して、自分を含む多くの日本人はアメリカで働く夢を持っている一方で、なかなかどうすればアメリカで働けるかを知る情報源がなく探すのに苦労したことを思い出して、記事を書くことにしました。

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 大丸拓郎さんの体験談は自分がリサーチしてきたアメリカで働く体験談の中でも大変珍しい、日本から留学を経ず直接アメリカに渡って働くというケースであるので、ぜひ一読することをお薦めします。

 本題になりますが、今回は大学留学経由でアメリカ企業で働くことについて解説していきたいと思います。私は日本の大学を出て日本企業で働いていたので、自分のケースではなく友人のケースを例に挙げます。

 アメリカにはオーストラリアやニュージーランドのようなワーキングホリデービザを発行していないので、米国永住権(グリーンカード)を持たない外国籍の人がアメリカで合法的に働くにはHというカテゴリーのビザを持っていなければなりません。これは多くの人がよく口にしているH1-Bになります。

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 しかし、H1-Bビザ[1]を持っていればアメリカ企業で定年まで働けるわけではなく、有効期限は三年となります。その上毎年発行されるH1-Bビザに数の上限があるので、更新の際に発行されなかったというケースになると在留資格が失われてしまうので帰国しなければいけません。また、最大の関門はH1-Bビザは雇用主がスポンサーとなることを約束しなければいけないので、アメリカ人を雇うより余分コストがかかることになります。

 上記のようなハードルにより、アメリカでの就学や就労の経験がない日本人が、直接アメリカ企業に就職することをとても困難にしています。上記で載せたnoteにも記されていましたが、アメリカで就職するにはコネがほぼ必須となります。コネはマイナスなニュアンスに取られがちですが、採用側からしてみれば海の向こう出身で英語がまともにできるか分からない人間より、会って話したことのある人を採用するのはある意味当たり前のことです。

  前置きが長くなりましたが、ここからはアメリカ大学留学経由でアメリカ企業で働くことを友人のケースを使って説明していきます。私と同じ高校を卒業した友人の進学、就職ルートを次の図1に示す。

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図1. 友人の進学、就職におけるビザステータス

 ここで注目してほしいのは、友人がシリコンバレー系企業に就職した時に使用しているビザのステータスです。図で示したF1ビザは、留学ビザになります。私のビザステータスもF1です。名前こそ留学ビザなのですが、このF1ビザは意外と強力なオプションがついています。それはCPT(Curricular Practical Training)とOPT(Optional Practical Traning)になります。上記の制度を利用することで、F1ビザを所持していればアメリカ大学在学中に留学オフィスの許可を得てアメリカ企業のインターンに応募して、夏休みなどを利用して働くことが可能となります。

 無事アメリカ大学を卒業した後、OPT制度を利用してアメリカ企業で働くことが可能です。H1-Bビザのように採用側がスポンサーとなる必要はなく、アメリカの大学を卒業していることで英語力も保証されるので、外国籍を採用するハードルが圧倒的にこちらが低くなります。通常OPTの期限は一年間ですが、大学の専攻分野がSTEM(Science Technology Engineering Math)である場合は、STEM OPT Extension制度を利用して最大三年間にまでOPTを延長することができます[2]。OPT期間中に働きながら、H1-Bビザを目指したり、グリーンカードを申請したりして、アメリカで長く働くことを考えているのであればいろいろと措置を取ることになります。ここではあくまで大まかな紹介なので、申請者本人の国籍などによって適用状況が異なるので、詳しくは移民弁護士などで確認する必要があります。

 友人はF1ビザのOPT三年間の後にH1-Bビザを発行を受けてもらえず、アイルランドの外国支社で働きながらH1-Bビザが降りるのを待っていましたが、こういうケースは珍しくない。後日友人の同僚のカザフスタン人も同様にH1-Bビザが降りずにアイルランドに一時的に職場を移し、発行を待つ間に日本に遊びに来ていました。メイド喫茶に連れていったらものすごく喜んでいましたがやはり外国から見てもメイド喫茶は有名みたいですね。

 アメリカで働くことについて全般的に書こうと思ったのですが長くなりそうなので大学経由のケースに限定したもののやはり長くなりました。大学留学経由でアメリカで働くことを目指すのは、「アメリカに居ること」という最大のアドバンテージを、うまく活用して英語を上達させたり、コネをたくさん作ったり、いわば孟子の言葉にある、「天の時、地の利、人の和」で地の利を得て、人の和を得ていくということである。

[1]H-1Bビザ

[2]STEM OPT Extension Overview | Study in the States

アメリカ大学院受験:結果通知

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 左からUCSB、CaltechUCLA、MIT、Stanford、UC Berkeleyになります。塔がシンボルである大学を両端に配置しました。実際に写真を撮ったのはUCSBとCaltechだけで、ほかはフリー素材になります。アメリカ大学院受験した時はこの6校を受けましたが、実はどの学校にも実際に行ったことがありませんでした。会社員として企業に勤めていたので、なかなかまとまった休暇をとって訪問する計画は立てられませんでした。

 前回の記事を画像付きで書いたらすこしアクセスが伸びたように見えたので、今回も写真を冒頭に載せました。CaltechはBeckman Instituteの写真を使っていますが、ベックマン温度計を大学生の時の実験で使っていたのが思い出深かったからです。

 昨年のこの時期はちょうど、出願した上記の大学から結果通知が来ていた頃でした。時系列で振り返ることで、志願者の合否を判定する審査システムを自分の視点から読み解いていきたいと思います。

 9月:ほとんどの大学の出願サイトはこの時期にオープンしたと覚えています。出願用アカウントを作るだけならメールアドレスと簡単なプロフィール設定で作れるので、大学からなんらかの情報が送られる可能性に備え、作っておいても大して手間はかからないはずです。図1にStanford大学のオンライン出願サイト画面を示しました。ほぼ全ての大学はこのようなオンライン出願システムを使っていて、郵送は成績表以外必要ないので、郵便が遅れたり届かなかったりする心配はなく便利です。準備が早い人はここで出願を終わらせて、声をかけられたら合格を決めるなどと言われていますが、自分は準備がまだまだであったので、12月の締め切り前に提出することにしました。

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図1.Stanford大学のオンライン出願サイト画面

 奨学金の締め切りも月末に迫っていたのでこの時期は最も忙しかったと記憶しています。どの奨学金も推薦書が必要だったので、自分が大学生の時にお世話になっていた三人の先生方から頂くことにしました。7月頃にアメリカ大学院受験と推薦状を頂く予定の旨を直接訪問で了承を頂いてたので、この時期にスムーズに推薦状を書いて頂くことができました。大学の先生は数週間海外出張することも珍しくないので、できるだけ前もって依頼しておくことが重要だと考えられます。

 10月:奨学金申請の書類作りと志望する研究室にメールを送付していました。奨学金にまだ合格してなかったので、全く返信がありませんでした。研究室のホームページで見つけた日本人客員研究員にメールしてアドバイス求めたりして、すごく優しく丁寧に教えてくださって感動したの覚えていますが、言われた通りにメールを送信する時間をアメリカ時間の金曜夕方にするなど工夫してみてもやはり返信を頂けませんでした。

 11月:締め切りまで後一か月となっていました。申請していた奨学金から書類審査の不合格通知が二つ届きました。会社員だったので出願できる奨学金が限られていた上に申請していたものも不合格となりましたが、日本学生支援機構(JASSO)の海外大学院学位留学奨学金(給付型)の書類締め切りはまだだったので申請を出しました。出願に必要なSoP(Statement of Purpose)、Personal History、先生方からの推薦状等の書類の英文チェックをウェブ上でやり取りできる業者を使い、清書したりして出願用の書類を月末までに完成させました。先生方は各大学院に提出する推薦状をプリントアウトした後にサインをして、スキャンしてPDFとしてファイル化した後に、上述した出願サイトから送られてくるURLに入って推薦状をアップロードすることになります。

 TOEFLも最後の悪あがきとして一回受けましたが、前日に会社の飲み会に参加したのでコンディションは悪かったのですが、結局この時に自己最高点の98点を取れました。しかし目安の100点には到達できませんでした。締め切りまでの時間もなかったのでTOEFLの受験はここで打ち切りました。大学にTOEFLのスコアを提出するには、TOEFLのサイトから送り先の大学のコードを入力して別料金を支払って送付指示をする必要があります。何営業日か掛かってしまうので、11月のうちに送付手続きを終わらせておきたいものです。GREも同様にETF運営なので、同じような手続きでスコア送付手続きを早めに終わらせておくと安心です。大学によっては出願サイトにTOEFLスコアが正式に届きましたと表示してくれるところもあります。

 成績証明書の原本を必要とする大学と必要としない大学がありますが、必要となっている場合は早めにEMSにて自分の卒業大学から所定書式(英文、厳封など)で取り寄せたものを送付する必要があります。私は東京大学工学部学生支援チームに申し込み書と返信封筒を送付したら、三営業日ほどで綺麗に厳封された成績証明書10通返送してくださって(重量オーバーだったようで新たに切手を買ってくださったみたいです)とても感謝でいっぱいな気持ちになりました。

 12月:すべての出願書類が揃い、あとは各大学院の出願サイトで書類をアップロードして提出ボタンを押すのみになります。出願した6校の締め切りのうちスタンフォード大学だけ12/5で、ほかは12/15でした(アメリカ時間)。出願サイトにも細かい記入事項があるので、余裕を持って提出ボタンを押せるように多めの時間を確保しておくとよいと思います。提出すると下記図2のように確認メールが届きます。

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図2. UCLAから届いた出願書類提出確認メール

 1月:インターネットで読んだ体験記ではこの時期に大学先生から個別に連絡が来るというケースもあるようですが、私は全く何もなく暇でした。中旬んにJASSOから大学院留学奨学金(給付型)の書類合格通知と面接の連絡が来たので、奨学金の書類審査に合格した旨を各大学院のAdmissionと先生のところに連絡しました。前までは全く返信もらえなかったのですが以前の記事(奨学金が示すのは財政能力だけではない - アメリカ大学院でPhDを目指す)にも書いたようにおよそ半数の先生から返事を頂くことができました。今年は学生を取る予定はないと教えてくださった先生方もいらっしゃいましたが、MIT、Stanfordのそれぞれの一人の先生方からは教授会の判断を待ってから話そうと言われました。

 2月:3日にJASSO大学院留学奨学金(給付型)の面接を受けました。英語で自分の志望動機を90秒で述べるのと、質疑応答でした。約10分の面接は終始和やかな雰囲気でした。一か月後に合格通知を頂きました。

    15日にStanford大学からメールが来て、出願サイトでDecision letterを確認しましたが、不合格でした。このように出願サイトに更新があったとメールが来て、サイトでDecision letterを確認するというパターンが多かったです。返信をくださったStanfordの教授先生に不合格だったことを伝えると、また頑張ってねと返信をくださいました。

    18日にUCLAの教授先生から、Cardiff大学で新しく立ち上げるグループにPhDとして来てほしいというメールを頂きました。そのメールの中で「I really like your background and I'm impressed with your first-author papers.」との文が書いてあったので、先生が自分を評価している点は大学院時代の研究内容と二本の原著論文にあることが分かりました。他の大学の結果も知りたかったので、一旦保留にしました。

 3月:2日にMIT、15日にBerkeley、26日にCaltechから不合格通知が届きました。6校中2校しか残っていませんでした。合格は厳しいと感じまたTOEFL準備を始めました。

 4月:4月初めから一週間経ってまだUCLAとUCSBから何も連絡がなかったので、AdmissionにせめてDecision letterを送ってくださいというメールを送りました。翌日にUCLAから不合格通知が来ました。しかし次の日に私の今現在のボスから連絡が来て、「連絡が遅くなって申し訳ない。今年は学生取るつもりなかったけど、先週大きな研究予算が取れたんだ。大学院を決めてなかったら今週末話しませんか。」との旨のメールを頂きました。先生があまりに忙しいので、なかなかメールベースで電話のアポイントメント取れなかったのですが、ホームページに書いてあったオフィスの電話番号に何度か電話してやっとアポイントメンが取れて、そこから三度の電話面接を経て合格を頂くことができました。先生は私の大学院時代の指導教官を知っていて、東京大学に行ったことがあって日本一の大学と知っていました。また、UCLAの教授先生と同じく、私の二本の原著論文を高く評価していました。その後に私のボスから学科AdmissionにOKが出て、5つの不合格通知を受け取った後に、初めてのAdmit letterを受け取りました(図3)。そこから一週間程度した後に、大学院学部長署名付きの合格通知書を頂きました。UCLAの教授先生からのCardiff大の研究グループへの誘いに断りを入れて、UCSBの入学手続きを進めました。

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図3. UCSB Materials DepartmentのAdmit letter(一部)

 出願準備を含まずに提出ボタンを押してから考えても、すべての受験結果が出そろうまで約半年かかりました。結果としては、6校中5校から不合格通知をもらいましたが、本当に行きたいトップ校だけに絞って出願していたので嬉しい結果となりました。

 それぞれの大学から合格通知が届く時期がずれているのは、志願者をwaitlistに入れているケースがあるからだと思っています。アメリカ大学院はオンライン出願で、指定した日時や場所で筆記試験などを受ける必要はないので、志願者は必ずと言っていいほど併願をします。なので合格者を多めに出したり、waitlistに入れて辞退が出た場合に新たに合格者を出したりしていると考えられます。受験結果がなかなか来なくても、Admissionや先生方に粘り強くメールしたりすると、新規予算獲得などで研究室の運営状況が変わって新たにPh.D.学生を雇うことができるようになった先生から声がかかるかもしれません。

アメリカ大学院受験:志望校選び

 2月に入って最低気温が5℃以下になる日が続いており、晴れていても冷たい風が吹くなど1月よりも寒いと感じているところです。

 昨年のこの時期は、出願した大学院から大体一週間おきに結果通知が届く頃でした。記憶が薄れないうちに、自分の大学院受験における志望校を選ぶ過程を振り返りたいと思います。

 アメリカの大学といえば、ハーバード大学スタンフォード大学マサチューセッツ工科大学などがテレビで名前が取り上げあげられ日本でも知名度が非常に高いと考えられます。近年の日本人ノーベル賞受賞者が在籍しているとして知られるシカゴ大学や、パデュー大学、ジェット推進研究所を擁するカリフォルニア工科大学、イェール大学などを含むIvy league、カリフォルニア大学バークレー校を始めとするPublic Ivy Leagueなどと、名門大学と呼ばれるような大学が枚挙にいとまがありません。

 この中から、例えばコンピューターサイエンスを学びたい!と考えているとすれば、有名なのはハーバードだけれど、理系のトップはMITって聞くし、逆にシリコンバレーと近いのスタンフォードで、スティーブウォズニアックの出身校はUC Berkeley、などと色々頭に浮かんでくるかもしれません。

 一つの参考としてTimes Higher Educationなどが毎年発表している大学ランキングがあります。日本でいうと予備校が出している大学偏差値ランキングがありますね。それぞれの機関が算出する大学ランキングの評価基準は異なるので、順位の前後はありますが、上位に来る大学は大体同じ顔触れになります。

 私が当時参考にしていたのはQS Top UniversitiesのWorld Univesity RankingsとQS Rankings: by Subjectsでした。ほかのランキングサイトを見なかったのは、複数の基準で複雑にしたくなかったのと、トップ校だけを出願するつもりだったからです。こちらにQS Top Univesitiesの世界大学ランキングと電気電子学科のランキングを示します。およそ半分の大学が入れ替わり、世界ランキングで上位に君臨する大学も分野によってはその実力が他大学と比べて位置が入れ替わるということが分かります。分野が細分化されている理系学部では、大学全体のランキングより分野別のランキングが参考になるというケースが多くなってくると思います。

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  2017年度の世界大学ランキング(左)と学科別(電気電子)ランキング(右)[1,2]

 学科を選択するのに気を付けたいことは、アメリカの大学院は選考に際して志願者のバックグラウンドの「コヒーレンスCoherence)」を評価していることになります。つまり、一貫性をもって目標を達成するに必要な取り組みを今まで行い、それを達成するまでのステップの一つに大学院で学ぶことが不可欠であることをアピールしなければいけません。これまではバイオエンジニアリングを専攻していたのに対して、天文学部に志望するとなると、コヒーレンスが不十分と評価され合格確率が低下してしまうことにつながると考えられます。志望する学科が分からない時は、自分の研究分野の著名な先生の所属機関から候補を絞り込むと早いかもしれません。

 私の場合は東京大学大学院応用化学専攻修士課程時代までの研究分野と勤務していた電機メーカーでの業務内容を総合的に考えて学科を電気電子に決めて、アメリカの大学を目指していたので、上記右図の1から4位の大学を志望校に入れました。このほかに、シリコンバレーのあるカリフォルニア州に行きたかったのもあり、大学院での研究分野の著名な先生が在籍するカリフォルニア大学サンタバーバラ校材料工学部、カリフォルニア工科大学電子工学科を加えて、合計6校を志望校としました。

 出願するにあたって、各出願校につき希望研究室を決めておく必要があります。学会などですでに教授先生と知り合った場合は希望研究室が決まりやすいのですが、併願する他校でも知り合いの教授先生が在籍する場合は少ないと考えられます。一つの学科に付き第三希望研究室まで出願できる場合が多いので、教授陣の中から希望する先生方を三人決めることができればいいのですが、アメリカの大学は日本と比べてかなり規模が大きく、一つの学科に50人以上の教授陣が在籍することも珍しくなく[3]、調査を実行するのに大変な労力がかかります。一般的には出願期限の一年前には志望校の調査を開始し、Eメールや現地訪問などを通して教授先生と連絡を取り受け入れの可能性を探っていくことが合格の可能性を高めると考えられる。

 

[1] QS World University Rankings 2019 | Top Universities

[2] Engineering - Electrical & Electronic | Top Universities

[3] Current Faculty | EECS at UC Berkeley

大学の保健センターに行ってきました

 明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。新年明けてからすぐに新学期が始まって、コースワークの課題と研究に追われる日々でした。

 大学院受験のプロセスについていくつかの側面について書いてきましたが、今回は留学生活の話になります。

 よくテレビなどのメディアで、アメリカで何らかの手術をしたら数百万円の医療費が請求されたなどの話を目にするかもしれません。私も年に数回海外旅行に出かけていたので、その都度クレジットカードの付帯保健の確認や海外旅行保健に入っていました。しかし長期留学になると、保険期間が数年間必要となるので、旅行保険では足りなくなるケースが出てきます。

 私が通う大学では学生に保険に加入することを義務付けていて、特に博士課程の学生の保健料金は大学院から毎学期支払われています。日本で会社員として働いていた時は毎月給料から天引きで健康保険料を払っていましたが、こちらでは全額を大学が支払うことになっているのでその分生活に少し余裕が出てきます。

 今回は事前にウェブ予約しようと思っていたのですが、枠が埋まっていたために直接保健センターに行き、受付で情報を伝えて当日の予約を入れてもらいました。待合室のソファで10分ほど待っていたところ名前を呼ばれ、初診の記入シートを二枚ほど書いた後に診察となりました。ちなみに症状は事前にインターネットで調べて、そのまま伝えたら問題なく伝わりました。

 初めてだったので費用がどうなるかとても心配していました。というのも、診察が終わって薬の処方を待っている時に、ふと見渡すと費用を書いているボードが見えて、診察$55と書いてありました。ああちょっとした不調で6000円がなくなるのか今後気を付けないと考えていたところ、名前を呼ばれ薬を受け取りに行きました。支払いの時表示された金額を見ると$10になっていました。診察の料金は確かに$55でしたが、その内$45が保険にカバーされていたようでした。

 後日もう一度保健センターに行き診察してもらいましたが、お医者さんは「OK, you have an insurance. We can start.」と最初に言っていました。なるほどテレビ等で見たような保険がなければお断りみたいなやり取りもあり得たのかと思いました。

 ちなみに日本で大学に通っていた頃に保健センター行くと、毎回の診察費が100円ほどだったので、驚きの安さでした。アメリカではそうは行かないと思ってはいましたが、物価から考えると$10で診察してもらえるのでしたら十分リーズナブルな値段だと思いました。

 今回の私のような軽めな症状と違って、骨折などの重傷で手術した場合は数千ドルを請求されたというケースも聞いたことがあります。保険があるとはいえ、日本のような高額医療費制度はないので、自己負担が跳ね上がることがないように普段の生活で外傷し得るような活動を避ける等注意をしたほうが良いと思います。

奨学金が示すのは財政能力だけではない

 10月から授業が始まってから更新が滞りました。今学期は授業三つ取りましたが、宿題と実験と実習でほぼ時間が埋まり、予想以上の忙しさに振り回されています。指導教官と相談して来学期は授業は二つに抑えて研究に時間を割けるようにプランしようと考えています。

 今回は欧米大学への出願に当たって、非常に重要な役割を果たす奨学金について自分の思っていることと経験を書いていきたいと思います。

 まず、奨学金という単語を英語に翻訳した時は、scholarshipになります。世界での認識では給付型が原則になります。ここは少し日本との認識に若干の違いがあると思われます。借与型の場合はscholarshipではなくstudent loanと呼ばれます。これ以降は私は特に断りがない限り、奨学金と言及した場合は給付型の奨学金を指します。

 採択されている奨学金の有無は、応募に際して重要な評価指標とされています。アメリカの理系大学院に出願する場合は、まず自分が所属したいと思う研究室に連絡を取って先方の先生に受け入れの意思があるかを確認するのが必須です。その際には、自分の略歴(CV)もEメールに添付するのが普通です。その略歴の中には採用されている奨学金を記入する必要もあるのですが、自分は奨学金の合否が分かる前にEメールで連絡を試みても全く返信がありませんでした。しかし、数ヶ月後に日本学生支援機構(JASSO)の海外大学院留学給付型奨学金に合格した旨を含めてEメールで連絡すると、半数以上の先生から返事が来ました。

 ここで私が感じたことは、奨学金に採用されるということは自分にとって一つの実績になる、という風に考えられてるようです。何故ならば、奨学金の審査項目はアメリカ大学院の審査項目とほぼ一致しているからだと思われます。

 一般的に奨学金に採用されるまでに、

・留学計画の作成

・1通〜3通の推薦状

・語学試験の成績(TOEFL、IELTSなど)

・大学時代の成績

・面接

 などといった審査書類を揃え、書類合格した後に、面接を経て奨学金の授与が決まります。すなわち、願書を大学院に出す前に、既に数ある応募者の中から書類審査に合格し、学術界の権威による面接を通過しているという実績を持っていることになります。大学院側からすれば、応募者の客観的評価として推薦状の執筆者以外にも応募者の評価が加わることになるので、かなりのプラスになると考えられます。

  奨学金に合格するには、かなり念入りの準備が必要なので、留学を考え始めた早い時期から情報収集、書類作成を行う必要があります。日本学生支援機構のホームページでは、民間や他国政府が提供している奨学金の情報を包括的に検索できるようになっているので、こちらからかなり多くの情報を得ることができます。

ryugaku.jasso.go.jp
 

 さらに、知名度の高い奨学金に合格することで、大学院の合格率を上げることが期待できます。例えば、日米政府によって設立されているフルブライト交流事業の大学院留学プログラムや、船井情報振興財団による大学院(博士号取得)留学支援などが挙げられます。これらの奨学金の競争率はかなり高いのですが、授与が決まればアメリカ大学院への合格に大きく前進とも言えます。

www.fulbright.jp

www.funaifoundation.jp

 以前の記事では、合格になったものの学部、教授先生からは授業料免除や給料支給の待遇が受けられない場合を書きましたが、奨学金の授与が決まっているのであれば生活費などの面で心配することなく渡航を決めることができます。

 奨学金の有無は大学院合格を左右する一つの重要なファクターであるので、早めに情報収集などの準備を行い、出来るだけ多くの奨学金に応募できるようにスケジュールを組むことをお薦めします。

欧米大学における寄付金の重要性

 秋学期の授業が始まって、キャンパス内では多くの学生が行き交うようになり、時折サークルの勧誘する学生の姿もメイン通りで見かけたりしています。

 前回の記事では欧米などの大学院でのPhD学生の待遇について書きました。一人のPhD学生を学科、教授先生などが年間数百万円に上る資金を出し、学生自身への学費+生活費支給が成り立っています。

 大学院によっては初年度は学科から支給されるケースも、100人の新入生がいたとすればそれだけで年間数億円の資金を学生の為に確保しなければならなくなります。まだ研究室に配属されていない学生に対してこれだけの予算を確保するには、どうするかというと卒業生等からの寄付金の存在が挙げられます。

 例えばこちらのForbesの昨年の記事では、アメリカの各大学への寄付金のランキングが記されています。首位のHarvard大学への寄付金は、日本円にして年間1300億円にも達しています。これは日本の大手企業の年間利益に匹敵する金額になります[1]。

forbesjapan.com

 もっと最近の例を挙げるならば、こちらの例が記憶に新しいです。

www.huffingtonpost.jp

 ニューヨーク大学は、医学部生全員に対して学費無料の奨学金を設立したと発表しています。記事の中では、確保した498億円のうち、110億円が一人による寄付だったと記されています。

 このように、アメリカの大学の運営は、卒業生などからの多額の寄付金によって支えられています。新入生に対する学費免除などの待遇は、いわば投資のような位置付けになります。将来この学生が卒業して社会に出る時は、〇〇大卒として母校の名声を高めるとともに、成功した暁には寄付金の形で恩返ししてもらいます。前回紹介した記事の中にもありましたが、アメリカの大学はある意味資本主義市場原理で回っていて、投資に値する学生を選抜しているとも言えます。

 アメリカの大学院への出願準備する際は、大学側から投資してもらう、という視点が欠かせません。在学中に何を学び、それを将来どのように生かし、どんな夢を実現するかをはっきりアピールする必要があります。

 

[1] 営業利益:株式ランキング - Yahoo!ファイナンス

 

  

 

欧米大学院における博士課程の学生の待遇

 新学期(Fall quarter)の開始まであと一週間となりました。寮には新入生などの学生が入り始め、ほぼ大学院生しかいなかったキャンパスが賑やかになってきました。

 前回の記事では、アメリカなど欧米諸国の博士課程の学生は学費免除+生活費支給の待遇を受けられると書きました。今回の記事ではこの待遇の仕組みについてもう少し詳しく解説します。

 基本的には、欧米などの大学院では大学教授が公的機関や企業などの資金予算を獲得し、その予算の中から一部の資金を使い博士課程の学生をRA(Research Assistant)として雇用します。前回で言及したHarvardやMITの私立大学のケースで計算すると、年間で学費+生活費で1000万円ほどを一人の学生の為に支払っている事になります。

 以前調査を行った時に参考なった記事のリンクを載せます。

toyokeizai.net

 例としてアメリカの大学院を挙げます。大学院に合格するということは、おおよそ三種類の合格があると考えられます。

 1.大学教授の先生から採用内定をもらった後、学科(Department)から正式に合格通知をもらいます。在学中は学費免除+生活費支給の待遇を受けられる場合がほとんどです。

 2.学科から合格を出され、最初の1学期〜1年は学科から給料を支給されます。大学によってはこの最初の期間は学科から、TA(Teaching Assistant)として雇われる形になり、大学生に講義をしたり試験を採点したりして仕事をこなす事で給料をもらいます。一定の期限までに教授先生とマッチングして、それ以降はRAとして雇ってもらい生活費を支給されます。しかし、場合によってはマッチングしても学費と給料を払ってもらえないこともあります。

 3.学科からは合格を出されるが、学費と生活費を支給されないケースです。政府や民間から奨学金を得るか、自費で学費と生活費を支払う必要があります。もしくは、在学中に自分からアピールし、RAなどとして教授先生に採用されると、学費と生活費を支払ってもらえるようになります。

 私は複数の大学院に出願して、アメリカの大学院とイギリスの大学院からそれぞれ一人ずつの先生から声がかかりました。オファーの内容は在学中の資金援助(学費+生活費)でした。これは1のケースですね。自分がこれまで聞いた合格体験はほとんどこちらのケースでした。

 また、先方の先生と連絡取っていた時、学科の合否決定を待ってから話しましょうと言われたケースもありました。これらの大学院はおそらく先に教授会で採用する学生を決めているのではないかと思っています。

 欧米などの大学院の博士課程の学生に対する待遇はほとんどの場合学費+生活費支給でだいたい同じです。ただ、合格は出てもTAまたはRAとして採用されなかった場合は奨学金や自己資金などを用意しなくてはならないケースもあるので、出願プロセスの中で奨学金の申請も非常に大事です。