アメリカ大学院留学:毎月の収支を考える

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UCSBの大学院生向け学生寮San Clemente Villages

 写真はUCSBの大学院生専用寮のSan Clemente Villagesです。私は家族寮に住んでいますが、同僚や他の学科の友達はほとんどこちらに住んでいます。アメリカに留学しに行くという時に、経済面に関する不安はよく耳にします。日本にいた時は、特にアメリカは物価が高いというのをあちこちで耳にしていたので、留学に来る前や、来た当初は買い物や家賃に関する不安はなかったと言うとウソになります。なので以下の項目からアメリカ大学院留学中の毎月の収支を分析しました。

 

収入 

欧米大学院における博士課程の学生の待遇 - アメリカ大学院でPhDを目指すアメリカの大学院で博士課程の学生は授業料免除+生活費支給の待遇が受けられると書きました。しかし、どの程度の生活ができるかは詳細に書いていませんでした。

 私はある留学イベントで興味のある大学のブースを回っていた時、ある大学のブースでPhD留学を目指していてその給料で生活するという旨を話したのですが、「その給料だけじゃ生活できないよ」という風な返答を受けて、不安を覚えたと記憶しています。他の方の話を聞いていると、普通に生活できる、という返答もあったり、当時では一体PhD給料で生活できるのか、できないかが不明でもやもやしていました。アメリカに来てから自分や周りの給料事情を聞いた限りでは、学科によって給料の違いはあるものの、住居費用、食費を除いた後に数百ドルが残るという人がほとんどです。

 下記のようなサイトで各大学の各学科が支給している給料を調べることができるようです。例としてHarvard大学を調べてみました。物価が高いと言われるボストンに位置するので、給料の額はそれなりに設定されているようです。このほかに日本では通常給与から健康保険が天引き(学振DC1等なら国民健康保険の支払い)されますが、アメリカには国民皆保険制度はないので、大学のHealth Planに加入することが多いです。このHealth Planも博士課程の学生なら大学から支払われるので、自分の給料から別途支払う必要はありません。日本からの留学生の場合、残念ながら租税条約ではこの給料は課税範囲となり、給料の一部を連邦税(Fedral Tax)として納めなくてはなりません。中国や一部の国からの留学生は連邦税を支払う必要はなく、この給料の全額を受けることができます(州税を考慮しない場合。カリフォルニア州では一定以下の収入なら州税が免除されます)。

Results - PhD Stipends

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PhD学生に支給される年間給与の一例(PhD Stipendsより)

 上記で示した額に加えて、さらに奨学金を獲得した場合、多くのケースとしては大学から支給される給料の額は減少しますが、大学からの給料+奨学金=決められた上限額まで大学が支払います。奨学金を獲得したからと言って大学から給料をもらえなくなるということではありません。

住居費用

 トップの写真で示した大学院生専用寮の内観や現在の寮費などはこちらのウェブサイトで確認することができます。

San Clemente Villages | UCSB Housing, Dining & Auxiliary Enterprises

寮費には電気、水道、ガスが含まれていて、インターネットも寮の敷地内で大学の有線LAN&Wi-Fiを使うことができるので、通信費は携帯電話のみと考えて大丈夫です。寮の中では四人住み、二人住みという二つのタイプのシェアルームがあり、寝室はそれぞれで、リビングルーム、キッチン、バスルームは共用という形になります。寝室にはベッドと勉強用の机あり、リビングには共用のソファとダイニングテーブルがあります。キッチンではIHコンロと冷蔵庫、電子レンジ、オーブンが揃っています。寮の施設外観、及び内部の様子を紹介する動画があったので以下に示します。

UCSB Sana Clemente Village Tour(UCSB GradPostより)

 四人住みタイプのシェアルームは毎月$775、二人住みタイプは毎月$887という家賃になります。学生寮なのでデポジットは取られませんので、このコストは考慮に入れなくても問題ありません。四人住みタイプのシェアルームに住むと想定した場合、寮費は毎月日本円にして約8万円になります。寮費の中に電気、水道、ガス、インターネットも含まれているので、東京で家賃7万円のアパートに住んで一人暮らしする場合とほぼ変わらない額になります。日本と異なるのは、部屋内に洗濯機を置けないので、共用のコインランドリーを使用することになります。寮生であれば洗いと乾燥合わせて$2程度で済みます。

 学生寮に住まない場合は、自力でOff-campus residenceやcraiglistなどで部屋を探すことになります。料金は様々で、場合によっては学生寮よりも安く住める場合もありますが、留学生を受け入れるかどうか、安全かどうかなど不明点も多いので最初は学生寮に滞在するとアメリカでの新生活に慣れやすいかもしれません。

通信費用

 携帯電話のネットワークはアメリカの四大キャリア(AT&T, Verizon, T-Mobile, Sprint)か、格安SIMを利用することができます。日本でSoftBankを使用していた方はアメリカ放題というサービスを、Sprintのネットワークで使うことができるようです。キャンパス内と寮には学生なら使用できるWi-Fiがあるので、私の携帯電話はプリペイド格安SIMを使用して、データ通信プランは最低限の月2GBにしています。これで毎月携帯電話料金は$15になります。この料金で電話は掛け放題、日本への国際電話も掛け放題なので、不満はありません。毎月かかる通信費用は$15~$30程度と考えても差し支えないと思います。携帯端末代金は人それぞれなのでここでは考慮に入れません。

食費

 食費に関しては外食の利用をできるだけ減らしていくことがキーだと思います。アメリカは物価が高いと言われる所以の一つは、外食が高いからそういう印象を受けやすいからだと思っています。大学内にはYOSHINOYAやPanda Express、Subway等のファストフード店がありますが、日本円換算で一食1000円近くかかるので、日本に比べると割高だと思います。コストコのフードコートやマクドナルド等は値段がリーズナブルなのですが、毎日ファストフード食べるのは体に悪影響なのでほどほどにしておきたいものです。そこで、スーパーで食材を買い込んで簡単に料理するなどして日々の食事に充てることになります。地域によって異なりますが、Costco, Alberterson, Trader Joes等で買い物していた経験からすると日本にあるスーパーと同等かさらに安いくらいの価格帯だと思います。勿論割安の商品はまとめ買いである場合が多いので、寮や学校のキッチンにある冷蔵庫を活用して保存したり、友達と割り勘で買うなりして、工夫が少し必要です。私の毎月の食費は時々の外食を含めて大体$150~$250になります。人によっては大学のmeal planを利用することもあるようですが、個人的にはやや割高に感じているので利用していません。

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地元にある99 Cent Shop(日本での100均に相当)

収支計算

 ここまで毎月の主な支出について書きました。UCSBにいる標準的なPhD学生として想定した場合、住居費用は$775、通信費用$20、食費$200、その他$100とすると一か月の支出は約$1100になります。私の大学にいるPhD学生は大体毎月手取りで約$2200の給料を受け取っているので、下記のグラフに示すように、毎月約$1000の黒字を貯金や投資などに回すことができます。アメリカでは年利2.5%の金利を出すオンライン銀行もあるので、Saving accountを開いて金利を受け取るのも一つの手です。

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留学中毎月の収支シミュレーション

 そのほかの出費として考えられるのは、研究で使用する白衣や防護眼鏡、実験道具などですが、これらはすべて大学から支給されるので、自費で支払う必要はありません。アメリカ大学院留学で学生寮に住んで外食を抑えれば、毎月余裕のある生活ができて、経済面での不安はほぼないと考えても問題ありません。極端に食費を削ろうとするのも健康に悪影響なのでお勧めしません。あまり交際費を計上していないのですが、学期中は研究とCourseworkの勉強で忙しくあまり時間が取れなかったのは本音です。それぞれの地域によって賃料や食費などの物価が異なり、上記のような収支計算はあくまで一例であることをご了承いただけると幸いです。