アメリカで働くには:大学留学経由編

 

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UCSB構内にて

 三月に入り夜の気温も10℃前後まで上昇し、冬時間は3/10に終わるので、いよいよ春の訪れです。アメリカでは卒業のシーズンでもあるので、晴れて卒業式でドレスアップした学生の姿もあちこちで見ることができます。

 先日Twitter上で大丸拓郎さんの記事を拝見して、自分を含む多くの日本人はアメリカで働く夢を持っている一方で、なかなかどうすればアメリカで働けるかを知る情報源がなく探すのに苦労したことを思い出して、記事を書くことにしました。

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 大丸拓郎さんの体験談は自分がリサーチしてきたアメリカで働く体験談の中でも大変珍しい、日本から留学を経ず直接アメリカに渡って働くというケースであるので、ぜひ一読することをお薦めします。

 本題になりますが、今回は大学留学経由でアメリカ企業で働くことについて解説していきたいと思います。私は日本の大学を出て日本企業で働いていたので、自分のケースではなく友人のケースを例に挙げます。

 アメリカにはオーストラリアやニュージーランドのようなワーキングホリデービザを発行していないので、米国永住権(グリーンカード)を持たない外国籍の人がアメリカで合法的に働くにはHというカテゴリーのビザを持っていなければなりません。これは多くの人がよく口にしているH1-Bになります。

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 しかし、H1-Bビザ[1]を持っていればアメリカ企業で定年まで働けるわけではなく、有効期限は三年となります。その上毎年発行されるH1-Bビザに数の上限があるので、更新の際に発行されなかったというケースになると在留資格が失われてしまうので帰国しなければいけません。また、最大の関門はH1-Bビザは雇用主がスポンサーとなることを約束しなければいけないので、アメリカ人を雇うより余分コストがかかることになります。

 上記のようなハードルにより、アメリカでの就学や就労の経験がない日本人が、直接アメリカ企業に就職することをとても困難にしています。上記で載せたnoteにも記されていましたが、アメリカで就職するにはコネがほぼ必須となります。コネはマイナスなニュアンスに取られがちですが、採用側からしてみれば海の向こう出身で英語がまともにできるか分からない人間より、会って話したことのある人を採用するのはある意味当たり前のことです。

  前置きが長くなりましたが、ここからはアメリカ大学留学経由でアメリカ企業で働くことを友人のケースを使って説明していきます。私と同じ高校を卒業した友人の進学、就職ルートを次の図1に示す。

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図1. 友人の進学、就職におけるビザステータス

 ここで注目してほしいのは、友人がシリコンバレー系企業に就職した時に使用しているビザのステータスです。図で示したF1ビザは、留学ビザになります。私のビザステータスもF1です。名前こそ留学ビザなのですが、このF1ビザは意外と強力なオプションがついています。それはCPT(Curricular Practical Training)とOPT(Optional Practical Traning)になります。上記の制度を利用することで、F1ビザを所持していればアメリカ大学在学中に留学オフィスの許可を得てアメリカ企業のインターンに応募して、夏休みなどを利用して働くことが可能となります。

 無事アメリカ大学を卒業した後、OPT制度を利用してアメリカ企業で働くことが可能です。H1-Bビザのように採用側がスポンサーとなる必要はなく、アメリカの大学を卒業していることで英語力も保証されるので、外国籍を採用するハードルが圧倒的にこちらが低くなります。通常OPTの期限は一年間ですが、大学の専攻分野がSTEM(Science Technology Engineering Math)である場合は、STEM OPT Extension制度を利用して最大三年間にまでOPTを延長することができます[2]。OPT期間中に働きながら、H1-Bビザを目指したり、グリーンカードを申請したりして、アメリカで長く働くことを考えているのであればいろいろと措置を取ることになります。ここではあくまで大まかな紹介なので、申請者本人の国籍などによって適用状況が異なるので、詳しくは移民弁護士などで確認する必要があります。

 友人はF1ビザのOPT三年間の後にH1-Bビザを発行を受けてもらえず、アイルランドの外国支社で働きながらH1-Bビザが降りるのを待っていましたが、こういうケースは珍しくない。後日友人の同僚のカザフスタン人も同様にH1-Bビザが降りずにアイルランドに一時的に職場を移し、発行を待つ間に日本に遊びに来ていました。メイド喫茶に連れていったらものすごく喜んでいましたがやはり外国から見てもメイド喫茶は有名みたいですね。

 アメリカで働くことについて全般的に書こうと思ったのですが長くなりそうなので大学経由のケースに限定したもののやはり長くなりました。大学留学経由でアメリカで働くことを目指すのは、「アメリカに居ること」という最大のアドバンテージを、うまく活用して英語を上達させたり、コネをたくさん作ったり、いわば孟子の言葉にある、「天の時、地の利、人の和」で地の利を得て、人の和を得ていくということである。

[1]H-1Bビザ

[2]STEM OPT Extension Overview | Study in the States