アメリカ大学院受験:出願から結果通知まで

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 左からUCSB、CaltechUCLA、MIT、Stanford、UC Berkeleyになります。塔がシンボルである大学を両端に配置しました。実際に写真を撮ったのはUCSBとCaltechだけで、ほかはフリー素材になります。アメリカ大学院受験した時はこの6校を受けましたが、実はどの学校にも実際に行ったことがありませんでした。会社員として企業に勤めていたので、なかなかまとまった休暇をとって訪問する計画は立てられませんでした。

 前回の記事を画像付きで書いたらすこしアクセスが伸びたように見えたので、今回も写真を冒頭に載せました。CaltechはBeckman Instituteの写真を使っていますが、ベックマン温度計を大学生の時の実験で使っていたのが思い出深かったからです。

 昨年のこの時期はちょうど、出願した上記の大学から結果通知が来ていた頃でした。時系列で振り返ることで、志願者の合否を判定する審査システムを自分の視点から読み解いていきたいと思います。

 9月:ほとんどの大学の出願サイトはこの時期にオープンしたと覚えています。出願用アカウントを作るだけならメールアドレスと簡単なプロフィール設定で作れるので、大学からなんらかの情報が送られる可能性に備え、作っておいても大して手間はかからないはずです。図1にStanford大学のオンライン出願サイト画面を示しました。ほぼ全ての大学はこのようなオンライン出願システムを使っていて、郵送は成績表以外必要ないので、郵便が遅れたり届かなかったりする心配はなく便利です。準備が早い人はここで出願を終わらせて、声をかけられたら合格を決めるなどと言われていますが、自分は準備がまだまだであったので、12月の締め切り前に提出することにしました。

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図1.Stanford大学のオンライン出願サイト画面

 奨学金の締め切りも月末に迫っていたのでこの時期は最も忙しかったと記憶しています。どの奨学金も推薦書が必要だったので、自分が大学生の時にお世話になっていた三人の先生方から頂くことにしました。7月頃にアメリカ大学院受験と推薦状を頂く予定の旨を直接訪問で了承を頂いてたので、この時期にスムーズに推薦状を書いて頂くことができました。大学の先生は数週間海外出張することも珍しくないので、できるだけ前もって依頼しておくことが重要だと考えられます。

 10月:奨学金申請の書類作りと志望する研究室にメールを送付していました。奨学金にまだ合格してなかったので、全く返信がありませんでした。研究室のホームページで見つけた日本人客員研究員にメールしてアドバイス求めたりして、すごく優しく丁寧に教えてくださって感動したの覚えていますが、言われた通りにメールを送信する時間をアメリカ時間の金曜夕方にするなど工夫してみてもやはり返信を頂けませんでした。

 11月:締め切りまで後一か月となっていました。申請していた奨学金から書類審査の不合格通知が二つ届きました。会社員だったので出願できる奨学金が限られていた上に申請していたものも不合格となりましたが、日本学生支援機構(JASSO)の海外大学院学位留学奨学金(給付型)の書類締め切りはまだだったので申請を出しました。出願に必要なSoP(Statement of Purpose)、Personal History、先生方からの推薦状等の書類の英文チェックをウェブ上でやり取りできる業者を使い、清書したりして出願用の書類を月末までに完成させました。先生方は各大学院に提出する推薦状をプリントアウトした後にサインをして、スキャンしてPDFとしてファイル化した後に、上述した出願サイトから送られてくるURLに入って推薦状をアップロードすることになります。

 TOEFLも最後の悪あがきとして一回受けましたが、前日に会社の飲み会に参加したのでコンディションは悪かったのですが、結局この時に自己最高点の98点を取れました。しかし目安の100点には到達できませんでした。締め切りまでの時間もなかったのでTOEFLの受験はここで打ち切りました。大学にTOEFLのスコアを提出するには、TOEFLのサイトから送り先の大学のコードを入力して別料金を支払って送付指示をする必要があります。何営業日か掛かってしまうので、11月のうちに送付手続きを終わらせておきたいものです。GREも同様にETF運営なので、同じような手続きでスコア送付手続きを早めに終わらせておくと安心です。大学によっては出願サイトにTOEFLスコアが正式に届きましたと表示してくれるところもあります。

 成績証明書の原本を必要とする大学と必要としない大学がありますが、必要となっている場合は早めにEMSにて自分の卒業大学から所定書式(英文、厳封など)で取り寄せたものを送付する必要があります。私は東京大学工学部学生支援チームに申し込み書と返信封筒を送付したら、三営業日ほどで綺麗に厳封された成績証明書10通返送してくださって(重量オーバーだったようで新たに切手を買ってくださったみたいです)とても感謝でいっぱいな気持ちになりました。

 12月:すべての出願書類が揃い、あとは各大学院の出願サイトで書類をアップロードして提出ボタンを押すのみになります。出願した6校の締め切りのうちスタンフォード大学だけ12/5で、ほかは12/15でした(アメリカ時間)。出願サイトにも細かい記入事項があるので、余裕を持って提出ボタンを押せるように多めの時間を確保しておくとよいと思います。提出すると下記図2のように確認メールが届きます。

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図2. UCLAから届いた出願書類提出確認メール

 1月:インターネットで読んだ体験記ではこの時期に大学先生から個別に連絡が来るというケースもあるようですが、私は全く何もなく暇でした。中旬にJASSOから大学院留学奨学金(給付型)の書類合格通知と面接の連絡が来たので、奨学金の書類審査に合格した旨を各大学院のAdmissionと先生のところに連絡しました。前までは全く返信もらえなかったのですが以前の記事(奨学金が示すのは財政能力だけではない - アメリカ大学院でPhDを目指す)にも書いたようにおよそ半数の先生から返事を頂くことができました。今年は学生を取る予定はないと教えてくださった先生方もいらっしゃいましたが、MIT、Stanfordのそれぞれの一人の先生方からは教授会の判断を待ってから話そうと言われました。

 2月:3日にJASSO大学院留学奨学金(給付型)の面接を受けました。英語で自分の志望動機を90秒で述べるのと、質疑応答でした。約10分の面接は終始和やかな雰囲気でした。一か月後に合格通知を頂きました。

    15日にStanford大学からメールが来て、出願サイトでDecision letterを確認しましたが、不合格でした。このように出願サイトに更新があったとメールが来て、サイトでDecision letterを確認するというパターンが多かったです。返信をくださったStanfordの教授先生に不合格だったことを伝えると、また頑張ってねと返信をくださいました。

    18日にUCLAの教授先生から、Cardiff大学で新しく立ち上げるグループにPhDとして来てほしいというメールを頂きました。そのメールの中で「I really like your background and I'm impressed with your first-author papers.」との文が書いてあったので、先生が自分を評価している点は大学院時代の研究内容と二本の原著論文にあることが分かりました。他の大学の結果も知りたかったので、一旦保留にしました。

 3月:2日にMIT、15日にBerkeley、26日にCaltechから不合格通知が届きました。6校中2校しか残っていませんでした。合格は厳しいと感じまたTOEFL準備を始めました。

 4月:4月初めから一週間経ってまだUCLAとUCSBから何も連絡がなかったので、AdmissionにせめてDecision letterを送ってくださいというメールを送りました。翌日にUCLAから不合格通知が来ました。しかし次の日に私の今現在のボスから連絡が来て、「連絡が遅くなって申し訳ない。今年は学生取るつもりなかったけど、先週大きな研究予算が取れたんだ。大学院を決めてなかったら今週末話しませんか。」との旨のメールを頂きました。先生があまりに忙しいので、なかなかメールベースで電話のアポイントメント取れなかったのですが、ホームページに書いてあったオフィスの電話番号に何度か電話してやっとアポイントメンが取れて、そこから三度の電話面接を経て合格を頂くことができました。先生は私の大学院時代の指導教官を知っていて、東京大学に行ったことがあって日本一の大学と知っていました。また、UCLAの教授先生と同じく、私の二本の原著論文を高く評価していました。その後に私のボスから学科AdmissionにOKが出て、5つの不合格通知を受け取った後に、初めてのAdmit letterを受け取りました(図3)。そこから一週間程度した後に、大学院学部長署名付きの合格通知書を頂きました。UCLAの教授先生からのCardiff大の研究グループへの誘いに断りを入れて、UCSBの入学手続きを進めました。

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図3. UCSB Materials DepartmentのAdmit letter(一部)

 出願準備を含まずに提出ボタンを押してから考えても、すべての受験結果が出そろうまで約半年かかりました。結果としては、6校中5校から不合格通知をもらいましたが、本当に行きたいトップ校だけに絞って出願していたので嬉しい結果となりました。

 それぞれの大学から合格通知が届く時期がずれているのは、志願者をwaitlistに入れているケースがあるからだと思っています。アメリカ大学院はオンライン出願で、指定した日時や場所で筆記試験などを受ける必要はないので、志願者は必ずと言っていいほど併願をします。なので合格者を多めに出したり、waitlistに入れて辞退が出た場合に新たに合格者を出したりしていると考えられます。受験結果がなかなか来なくても、Admissionや先生方に粘り強くメールしたりすると、新規予算獲得などで研究室の運営状況が変わって新たにPh.D.学生を雇うことができるようになった先生から声がかかるかもしれません。