欧米大学における寄付金の重要性

 秋学期の授業が始まって、キャンパス内では多くの学生が行き交うようになり、時折サークルの勧誘する学生の姿もメイン通りで見かけたりしています。

 前回の記事では欧米などの大学院でのPhD学生の待遇について書きました。一人のPhD学生を学科、教授先生などが年間数百万円に上る資金を出し、学生自身への学費+生活費支給が成り立っています。

 大学院によっては初年度は学科から支給されるケースも、100人の新入生がいたとすればそれだけで年間数億円の資金を学生の為に確保しなければならなくなります。まだ研究室に配属されていない学生に対してこれだけの予算を確保するには、どうするかというと卒業生等からの寄付金の存在が挙げられます。

 例えばこちらのForbesの昨年の記事では、アメリカの各大学への寄付金のランキングが記されています。首位のHarvard大学への寄付金は、日本円にして年間1300億円にも達しています。これは日本の大手企業の年間利益に匹敵する金額になります[1]。

forbesjapan.com

 もっと最近の例を挙げるならば、こちらの例が記憶に新しいです。

www.huffingtonpost.jp

 ニューヨーク大学は、医学部生全員に対して学費無料の奨学金を設立したと発表しています。記事の中では、確保した498億円のうち、110億円が一人による寄付だったと記されています。

 このように、アメリカの大学の運営は、卒業生などからの多額の寄付金によって支えられています。新入生に対する学費免除などの待遇は、いわば投資のような位置付けになります。将来この学生が卒業して社会に出る時は、〇〇大卒として母校の名声を高めるとともに、成功した暁には寄付金の形で恩返ししてもらいます。前回紹介した記事の中にもありましたが、アメリカの大学はある意味資本主義市場原理で回っていて、投資に値する学生を選抜しているとも言えます。

 アメリカの大学院への出願準備する際は、大学側から投資してもらう、という視点が欠かせません。在学中に何を学び、それを将来どのように生かし、どんな夢を実現するかをはっきりアピールする必要があります。

 

[1] 営業利益:株式ランキング - Yahoo!ファイナンス

 

  

 

欧米大学院における博士課程の学生の待遇

 新学期(Fall quarter)の開始まであと一週間となりました。寮には新入生などの学生が入り始め、ほぼ大学院生しかいなかったキャンパスが賑やかになってきました。

 前回の記事では、アメリカなど欧米諸国の博士課程の学生は学費免除+生活費支給の待遇を受けられると書きました。今回の記事ではこの待遇の仕組みについてもう少し詳しく解説します。

 基本的には、欧米などの大学院では大学教授が公的機関や企業などの資金予算を獲得し、その予算の中から一部の資金を使い博士課程の学生をRA(Research Assistant)として雇用します。前回で言及したHarvardやMITの私立大学のケースで計算すると、年間で学費+生活費で1000万円ほどを一人の学生の為に支払っている事になります。

 以前調査を行った時に参考なった記事のリンクを載せます。

toyokeizai.net

 例としてアメリカの大学院を挙げます。大学院に合格するということは、おおよそ三種類の合格があると考えられます。

 1.大学教授の先生から採用内定をもらった後、学科(Department)から正式に合格通知をもらいます。在学中は学費免除+生活費支給の待遇を受けられる場合がほとんどです。

 2.学科から合格を出され、最初の1学期〜1年は学科から給料を支給されます。大学によってはこの最初の期間は学科から、TA(Teaching Assistant)として雇われる形になり、大学生に講義をしたり試験を採点したりして仕事をこなす事で給料をもらいます。一定の期限までに教授先生とマッチングして、それ以降はRAとして雇ってもらい生活費を支給されます。しかし、場合によってはマッチングしても学費と給料を払ってもらえないこともあります。

 3.学科からは合格を出されるが、学費と生活費を支給されないケースです。政府や民間から奨学金を得るか、自費で学費と生活費を支払う必要があります。もしくは、在学中に自分からアピールし、RAなどとして教授先生に採用されると、学費と生活費を支払ってもらえるようになります。

 私は複数の大学院に出願して、アメリカの大学院とイギリスの大学院からそれぞれ一人ずつの先生から声がかかりました。オファーの内容は在学中の資金援助(学費+生活費)でした。これは1のケースですね。自分がこれまで聞いた合格体験はほとんどこちらのケースでした。

 また、先方の先生と連絡取っていた時、学科の合否決定を待ってから話しましょうと言われたケースもありました。これらの大学院はおそらく先に教授会で採用する学生を決めているのではないかと思っています。

 欧米などの大学院の博士課程の学生に対する待遇はほとんどの場合学費+生活費支給でだいたい同じです。ただ、合格は出てもTAまたはRAとして採用されなかった場合は奨学金や自己資金などを用意しなくてはならないケースもあるので、出願プロセスの中で奨学金の申請も非常に大事です。

アメリカで大学院留学を目指すようになったきっかけ

 アメリカに到着して一ヶ月が経ち、ようやく生活が落ち着いてきました。ブログを始めた目的ですが、自分の大学院出願から留学生活を記録すると共に、大学院留学を考えてる方にとって有益な内容にもなれたら幸いだと考えました。


 一つ目の記事として、アメリカ大学院留学を目指すきっかけを書きます。

 私がアメリカ大学院留学について知ったのは、修士1年生の時にこちらの説明会に参加したことがきっかけでした。工学部の大きめの講義室を使っていたのですが、100人程度の参加者がいたと思います。

 

gakuiryugaku.net

 アメリカ大学院への出願プロセスの詳細な解説が話題のメインでしたが、この時点で自分が一番驚いたのは、アメリカの大学院では博士課程の学生に対して、

学費免除+生活費支給

が一般的であるということでした。留学の夢をなんとなく抱いていた自分は、調べるたびにアメリカ大学の学費は日本よりはるかに高いなどといった情報を見て半ば諦めていました。

 例えば、アメリカの名門大学Harvard, Masschusettes Institute of Technology(MIT), Stanfordなどは、私立大学であり、年間の学費は日本円にして500万円、600万円を超えます。最近はメディアで小室圭さんのフォーダム大学留学が話題になっていると思いますが、一説では3年間の学費合計は2000万円を越えると言われています。

 また、公立大学の名門校であるUniversity of Californian, Berkeley(UCB), UCLA, ミシガン大学などは、年間の学費は200万円程度になります。これは日本の私立大学の理系学部の学費と変わらないですね。それでも日本の国立大学に比べてかなり高いですが。

 学費に加えて、生活費なども考慮すると、アメリカ留学の経済的ハードルはそれまでの自分にとっては非常に高く感じました。しかしこの日の説明会でその経済的ハードルは大学院PhD留学でクリア可能であると知ると、海外の大学院留学を考えはじめ、出願準備を少しずつ始めました。